2011年12月20日火曜日

HOTPOT project 報告編&インタビュー

先週土曜、大学にて開催されたSEIKAゼミナール。
吉野央子先生のHOTPOT project の展示とレクチャーが行われました。

当日の様子はこちら。


瓦チップの上に54個の石膏物がずらり。


いくつかのヤカンからは湯気が立ち上っています。
この日の最低気温は1℃。寒いからいつもより湯気がよく見えます。

ヤカンは全部で11個。


上から見ると・・・・。
日本地図です。

54、11、なんの数かお分かりでしょうか?

HOTSPOTという言葉があります。
局地的に何らかの値が高かったり、何らかの活動が活発であったりする地点・場所・地域を指す言葉です。

特に最近では、原子力事故による放射能汚染の激しい地域を指していう言葉として、よく聞かれるようになりました。

HOTSPOTとヤカンのPOTを掛け合わせたら・・・・。
HOTPOT となりました。



一区切りついた今回のプロジェクトについて、
央子先生にいろいろと聞いてみました。


●今回、高校生を対象にしたゼミナールということで、彼らを前にレクチャーではどういった内容をお話しされたのですか?

3.11東日本大震災、リアルタイムで観た津波のテレビ中継は本当にすさまじく、恐くて立ったり座ったりと落ち着かなかった。本当に現実に起こったことなのか?アーティストは無力なのか?
個人レベルでできることと到底できないことの間で無力感と空虚感にさいまなれた。

自分には何ができるだろうか?

核への強いNOという思いは以前から持っていた。
しかしその反面、モノをつくることはとてもポジティブな行為だと思っている。


●展示した作品について教えてください。

地上から眺めると、一見して全体が望めないこの作品の真意は、建物上階から眺望し俯瞰することにある。
日常生活で不可欠な電力と発電手段との関係、原発の是非も、目前の豊かさや利潤を求めれば全体図は霞んでしまう。
自らの立ち位置を変え、視点を変えることで、見えてくることも変わる。
本作品では、今、地球規模の広い視野をもって考えなければならないことは何かを示唆している。


●見に来られた人たちの反応はどうでしたか?

学内で働く職員の方が何度も見に来てくれたり、1日では惜しい、という意見をもらったりした。
話す中で、同じ思いを共有できたことが何より嬉しかった。


●今回、ご自身の制作において初めて、学生を含めた多くの人と一緒に作品を作りあげていくという方法で制作されましたが、いかがでしたか?

一緒に作りあげたというよりは、手伝う感覚で参加する学生は多い。
でもその中で、2,3人は一緒に作っていこうという感覚でやってくれた。
それを見て、またやれるな、と思った。
今後のテーマのひとつとして、どうやって人を集めて、どうやって人とやるのかを考えるきっかけになった。もっとシステマチックにやっていかなければいけないのかもしれない。


●そもそも央子先生の思うアートって何でしょうか?

アートに必要なものはリアリティ(現実感、真実性、迫真性)、アイデンティティ(自己が時間や環境で左右されない同一性、主体性)、インディビジュアレィティ(国家や社会や種々の集団に対して、それを構成している個々)。
お互いを理解しあうときに必要な対話、言葉によるコミュニケーションである。
作品では感じる空きを与えるような余白が必要だと考えている。
今回、リアリティを伝えるために、作品を作って見せた。


以上、央子先生へのインタビューでした。


HOTPOTというプロジェクト名は、先生のお気に入りの様子。
この名前も何人かで考えました。

この名前に決まった時、このプロジェクトは絶対うまくいく!と思ったそうです。


今は54個の石膏物のこれからを考え中。
「トラックに積んで、日本海の海沿いで再展示しようかな~・・・。」

プロジェクトはつづいているようです。





ツジタ